イリアは一瞬鋭い痛みを感じたが、続くジンジンとする鈍痛は、どこか 心地よささえあった。 「んん、う……カイ兄さん……ボク……」 「い、痛かったカイ? イリアちゃん……」 奥までゆっくりと挿入した状態で、そこで初めて声を上げたイリアに、 カイは気づかうように声をかける。 「う、ううん、大丈夫、ボク……カイ兄さんと、ひとつになってるん…… だね……」 イリアは最初の痛みのために涙の滲んだ顔で笑みをつくった。が、実際、 既に痛いと言うより、熱く、ジンジンした、それでいてどこか気持ちいい ような感覚になっていた。 「う……イリア……ちゃん?」 イリアのどこか思いつめたような表情、そして言葉に、カイは衝撃に似 たような何かを感じた……気がした。 「どう……したの? カイ兄さん、さっきから、変……だよ?」 イリアが不安げに見上げる。すると、カイははっと、我に返った。 しかしそこはさすがに、取り乱したりはせず、笑みをつくる。 「ん、なんでもないヨ。それより、大丈夫かい?」 と、平静を取り戻して、イリアに尋ねる。 「ちょっとだけ痛いケド……大丈夫」 今度は、自分でも妙だと思うくらい自然に、笑顔が出た。 「よくわかなんいケド……気持ちいい気もする」 「そっか、よかった」 軽く胸をなで下ろすようにしてから、カイはさらに深く、お互いの身体 を寄せる。イリアの肩に優しく手をかけて、再び口付ける。 ゆっくりと2人の唇が離れていく。 「じゃあ、動くからネ?」 「うっ、うん……」 イリアはまだ少しぎこちない反応だが、過度に緊張しているようでもな い。その態度に少し安堵しながら、カイはゆっくりとストロークを始める。 「ふぁ……ぁ……っ」 カイの動きに、自然と、甘い声が漏れた。イリアにはもう、それに抵抗 する気もなかった。 「く……ふぅ……っ」 処女を失ったばかりの硬い膣内の感触に、カイは呻くように声を漏らし た。 「あぅぅ……はぅぅ……はぅぅ……はぁぁ……」 カイが奥へと進む度に、イリアの声が漏れる。徐々に胸を突き出すよう な格好になってしまい、手がベッドのシーツをつかむ。 カイは様子を見るようにゆっくりとしたストロークをくり返した後、徐 々にスピードを上げて、一定のリズムまで速める。 「あ、う、……はぁ……はぁ……はぁぁ……」 イリアが熱く荒い息をする。 「く、イリア、ちゃ……っ」 少女の膣の硬さに顔を歪めながら、カイはストロークを続けた。 「ああ、カイ、兄ささ……わ、私っ、も、もう……っ」 「…………っ!」 カイの表情が、ひときわ歪み、歯を食いしばるような表情になる。 「あ、あっ、あぁ……ぁ……っ」 びくんびくん、絶頂にイリアの身体が跳ねる。 「はぁ……はぁ……はぁ……」 「はぁ……はぁ……っ」 お互い、荒い息をしている。 カイは茫然自失したような表情で、ズルリ、とイリアの中から引き抜い た。カイが中で放出してしまった精が、2人の間に白い糸を引く。 「んぅっ……」 小さい声で哭いた後、イリアは相変わらず荒い息をしながら、ベッドの 上でぐったりとしている。 カイはベッドからよろめくように降り、ひとまずトランクスだけを身に つけると、部屋の中にあった椅子に、どさっ、ともたれかかるように腰を 下ろした。 ――なにやってんだ、俺…… 興奮を放出し切ったけだるさが、それまで抑えられていた嫌悪感に急に カイの頭にもたれかかってきた。 親友の妹に手を出して。しかも慰めあいの救いのないセックスをして、 その上、中に放って……カイの頭の中で、自分を責める声がメリーゴーラ ンドのように駆け回る。 ぼーっと上を向き、焦点の定まらない目をしていたカイだったが、 「っ、く……」 という、呻くようなイリアの声に、はっと我に返り、慌てて彼女の方を 向いた。 「どうしたの、イリアちゃん!? 泣いてるの……?」 立ち上がり、ベッドの側まで歩み寄る。 イリアは薄い毛布にくるまり、震えていた。まだ、涙を零しているわけ ではなかった。ただ、自分の肩を抱えてガクガクと震えている。尋常では なかった。 「イリアちゃん……もしかして、俺とのコト……」 カイが濁すように言う、だが、イリアは激しく首を左右に振った。 「え?」 カイは思わず聞き返す。 「違う……怖い、んだ……どうしようも、なくて……」 「……イリアちゃん……」 カイは、自身にはまだほとんどが不可解だったが、とにかくイリアの側 に腰を下ろし、その後頭部からゆっくりと撫でていく。 「怖いって……どう言うコト?」 優しく問いただす。だが、イリアの緊張は解けない。 「ボク……よく、夢を見るんだ、その……シオンの……」 「シオン?……ああ、アドビスの王子の……」 カイは困ったような苦笑になった。やはりまだ、イリアは彼の事を思い 続けているのか。 イリアは震える声で、話し続けた。 「ボクが……ウリックが……見てる目の前で……シオンが、ボクを助ける 為に、血まみれになって、倒れて……そんな夢を、何度も何度も、見るん だ……」 「そっか、イリアちゃんにとって、その人は……」 カイは軽く目を閉じ、優しげな口調で、言う。イリアは無言で、コクン、 と頷いた。 カイは、泣きそうになった。自分がいかに早計だったのか。けれど、今 のイリアの前で、自分も悔いて泣き出すわけにはいかない。 ところが。 「前は、夢はそこで終わってた。いつも……カイ兄さんと再開して、しば らくたつまでは。でも……」 イリアはカイの予想していなかった、続きを口にしはじめた。 カイははっと、瞳を開き、イリアの横顔に視線を向ける。 「最近は、続きがあるんだ」 「続き?」 カイが聞き返すと、イリアはこくんと頷いてから、話を続ける。 「気がつくと、ボクは、ウリックじゃなくて……イリアに、今の姿になっ てるんだ。そして、倒れてるのはシオンじゃなくて――」 「!!」 イリアの言葉を聞いて、カイは一瞬、絶句する。 僅かに沈黙の後、イリアは顔を上げ、カイの表情を見つめる。そして、 話し出した。 「最初のお兄ちゃんも、ザード兄さんも、シオンも、私の大切な人は、み んな、消えていっちゃう、だから、カイ兄さんも、いつか消えてしまいそ うで、怖いんだ。だから……今だって……こうして……でも、やっぱり嫌 ……カイ兄さんが消えちゃうなんて嫌だ!」 「イリアちゃん……」 カイは、先程までとは全く違う意味で、悔いた。確かに、お互い、大切 な存在と、目の前の相手とをダブらせていた。でも、カイにとってのそれ と、イリアにとってのそれは、全く別物だった。彼女にとっての大切な存 在は、もう、彼女の手の届かないところにいる。そして、その失ってしま った存在と、カイとを同列に見ていたのだ。 ――馬鹿だ、俺…… 彼女の瞳に、英雄と呼ばれた男と、アドビスの王子の姿があったことは 間違いなかった。けれど、自分も、見ていてくれたのだ。それに、気付か なかった―― イリアは再び俯く。 「わかってる、カイ兄さん、ホントはボク以外に好きな人がいるって」 その言葉に、カイはただならぬショックを受け、唖然とする。イリアは それに気付くことなく、言葉を続けた。 「でも、消えて欲しくない……たとえ、ボク以外の人と結ばれたって、生 きてさえいれば、いつだって会える。話もできる、だからっ、ボク……っ ……」 ギリ、歯を鳴らし、やがて……カイは、ひとつの決心をした。 イリアの肩を優しく抱き寄せ、そしてその決意を伝える。 「誓うヨ……イリアちゃん、俺はイリアちゃんより先に、死んだりしない って」 「カイ兄さん……」 涙の滲んだ表情を、カイに向ける。けれどそこには、イリアの期待した、 カイの優しげな微笑みはなかった。彼は、真剣な表情でイリアを見つめ返 してきた。 「そして、イリアちゃんを幸せにする……って」 「え……きゃっ」 カイはベッドに脚を上げ、イリアをしっかりと抱き締めた。 「で、でもっ、カイ兄さん……っ」 戸惑うイリア。カイは、イリアの後頭部の至近で応える。 「いいんだ……その相手は、俺のコトどう思ってるか……解らないし」 「そ、そんなことないよっ……きっと」 イリアは戸惑いながら、カイの言葉を否定する。 しかし、カイはかまわず、自分の言葉を続けた。 「それに、イリアちゃんと同じように、俺にとっても、イリアちゃんは凄 く大事な存在なんだ、比べようがない程。できるだけ……傷つけたくない」 囁くように言ってから、優しげに苦笑する。 「気付くのが遅かったケドね……ゴメン」 「そんな、謝らないでよ、ボク……っ」 イリアは戸惑った表情のまま、顔を真っ赤にする。 「それに俺、親友と約束したから……妹を、頼む、って……まぁ、あのザ ードが、こんなこと望んで言ったのとは違うと思うケド……でも、今から じゃ、これしか方法、ないだろ?」 おどけたように、カイは言い、優しげな微笑みになった。 「カイ兄さん……ずるいよ、ザード兄さんのコト持ち出すなんて……」 いいながら、イリアはそっとカイの腕を解くと、カイに向き直る。 「イリアちゃん……!」 イリアは瞳から涙を零していた。けれど、表情は自然な、優しげな笑顔 だった。 「んっ……ぅ」 イリアの方から、唇を重ねていく。そして、カイはイリアの身体を、し っかりと抱き締めた。 唇が離れる。 2人はお互い、どこか間の抜けたような表情で、僅かな間だが、ぼぅっ と相手を見つめあう。 「プッ」 「あははは……」 やはり2人とも、なにかが妙におかしくて、笑いあってしまう。 ひとしきり笑いあった後、カイはぎゅっ、とイリアを抱き締め直した。 「カイ兄さん……?」 イリアが顔を、カイの首元に重ねていきながら、カイの行為に問いかけ るように言う。 「イリアちゃん、もう一度、させてくれないカナ。今度はちゃんと……」 女性経験は人並み以上にあるつもりのカイだったが、続く言葉を発しよ うとすると、妙に照れくさくなってしまい、どもりがちになってしまう。 「……その……恋人として……」 カイの視線は、宙を泳いでしまう。 「クス……いいよ」 イリアは軽く笑って、肯定の返事を返した。 「ん、じゃあ……」 カイはゆっくりと身を起こすと、イリアをベッドの上に下ろす。 「ん、ケドさ……」 ベッドの上に寝そべりつつ、イリアは少し困ったような表情になる。 「どうしたんだい?」 きょと、として、カイが聞き返す。 「ううん、ボクってさ」 そう言うとイリアは、軽く両腕を挙げて、左右を見渡す。 「あんまり女の子としてのミリョクないよね、なんかこう、見事に日焼け しちゃってるし、女の子の割には筋肉付き過ぎちゃってるし……」 イリアの言葉に、カイは一瞬、呆気に取られた。 ――そうか、イリアちゃんは俺が“誰を”好きだったのかまでは気付い てないのか…… いろいろな意味で複雑な思いが頭をよぎる。それに苦笑しつつ、イリア に声をかける。 「そ、そんなことないよ、健康的な肌だと思うし……別に隆々としてるワ ケじゃないし、余分な肉がついてないって感じで、とっても魅力的だと思 うヨ?」 そう言って、カイは苦笑からにこっとした満面の笑顔にかわる。 「そ、そうカナ……」 照れたように顔を紅くしつつ、イリアは微笑みながらカイを見上げる。 「俺は女の子をほめるコトは得意でも、その時にウソはつかないつもりな んだけどな」 いいつつ、右手を逆手に滑らせ、イリアの腹部を中指を這わせる。 「あっ……」 少しくすぐったそうな声を漏らしたイリアの口に、カイの唇が塞ぐ。 「んっ……ふ……」 キスはすぐに離れていき、その間に右手は腹部をなぞり上げてそのまま 一方の乳房を手の平全体で包み込む。同時に、左手で同じようにもう一方 の乳房も包んだ。 「ん……ふ……」 カイは慎ましやかなイリアの乳房を、撫でるように、包み込むように、 扱っていく。 「イリアちゃん……」 どこかうっとりしたような表情になるイリアを見て、カイは妙な興奮を 覚えていく。 「イリアちゃん……」 くり返し、名前を呼んだ。 ひとしきり胸を弄んだ後、カイは左手でイリアの肩を抱き寄せる。その まま、再度口付ける。唇を触れさせるだけのモノだったが、ぎゅっ、と、 求めるように押し付ける。 カイの右手がイリアの股間に伸び、少女の性器に軽く指先を埋める。 「んっ、あぁ……っ」 びくっ、イリアの身体が反応した。 「……怖いかい?」 「ううん……全然」 息を荒くしつつも、イリアは先程よりも余裕げな表情で返事をする。 「じゃあ……」 カイは少し思わせぶりに言いつつ、ゆっくり指を動かし、その先端でイ リアのクリトリスを擦る。 「ひゃう!」 イリアが悲鳴のような声を上げ、身体が跳ね上がる。 「い、痛かったかい?」 カイは指の力を緩め、心配げな表情で聞き返す。 「はぁ、はぁ、ちょっと痛いような感じもするけど、き、気持ち、良すぎ ちゃって、身体が、びくって……」 強い刺激に、涙が滲んだ顔で、イリアは激しく息をしながら答える。 「そっか……」 カイはそう言うと、指を少しずらして、花びらを弄くる。 先程のクリトリスへの刺激が原因か、イリアの女性器からとろっ……と 蜜が溢れ出す。 「んっ、う……ふ……んっ……」 「イリアちゃん……俺も、そろそろ……」 良がるイリアの前で、カイは顔を紅潮させて、イリアを求めた。 「え?」 一瞬、理解がきょとんとするイリアだったが、すぐに肯定の返事をした。 「あ……うん、いいヨ」 「ん、じゃ、じゃあ……」 カイは先程からテント状態のトランクスを脱ぎ、イリアの上に重なり直 す。 ペニスをイリアの股間にあてがい、ゆっくりと押し進めていく。 「んぅっ、ひくっ……」 自分の中にカイが入り込んで来る間隔に、イリアは自分の胸の前でぎゅ、 と手を握りしめた。 「くっ……」 きつさにうめき声を上げながら、カイはイリアの奥まで進入していく。 「っは、ぁ、はぁ……イリアちゃん、大丈夫……?」 「はぁ……はぁ……」 しばらくは、自分の乳房の間を撫でていたイリアだったが、暫くして、 「ぷっ、クスクスっ」 と、笑い声を上げた。 「えっ?」 カイが呆気に取られたような表情をする。 「カイ兄さんってば、さっきからボクのコト心配してばっかり。ちょこー っとだけイタイだけで、全然平気なのに……これじゃどっちが初めてかワ カンナイよ」 イリアが苦笑しながら言うと、カイは「うっ」と間の抜けたうめき声を 漏らしてから、 「だ、だって、イリアちゃん、だし、サ……」 と、気まずそうに視線を宙に泳がせながら、そう言った。 そして、軽く鼻を鳴らして優しげな笑顔に戻り、イリアを見つめ直す。 「じゃあ、動くヨ」 「うん……」 イリアは即答したが、カイはほとんど同時にゆっくりとストロークを始 め、深く、イリアの中を抉っていく。 「ふあ、は、ぁぁ……カイ兄さん……」 膣の中にカイを感じ、イリアはカイの顔を見つめる。 ――昔から好きだったヨ、アメのお兄ちゃん…… イリアはそう思いながら、カイを見つめていたが、 「は、ぁぁ、はぁ……はぁ……っ」 カイのストロークが速くなって来るにつれ、視線を一点に向けていられ なくなってくる。身体が昂ってくる。 「くっ、い、イリア、ちゃん……」 カイも、うめきながら、深いストロークを続ける。 「ああ……はぁぁ……ぁぁ……っ、カイ兄さん……っ」 お互い、うわ言のように互いの名前を呼ぶ。 より深く求めるように、イリアはカイの首に腕を巻き付ける。その間も、 カイの運動は続き、ぐちゅ、ぐちゅっ、と水音が室内に響いた。 そして、 「あくっ、ぅぅっ……」 どくっ、どくっ、どくっ、どくぅっ……!! カイはぶるぶるっと身震いしたかと思うと、イリアの膣内に深く突き入 れたまま、そこで精を放ってしまう。 「熱いッ、あ、あぁぁ……はぁ……っ」 ため息をつくように声を出しながら、イリアもまた、絶頂に激しく背を 仰け反らせた。 「カイ兄さん……」 「イリアちゃん……」 お互い、荒い息をしながら、真剣な瞳で見つめあう。 「カイ兄さん、大好き……」 イリアが言う。すると、カイはコクンと頷き、微笑んだ。 「俺、イリアちゃんにそう言われて、凄く嬉しいよ……イリアちゃんのそ の気持ち、受け止めるから……」 自分はまだ吹っ切れてないな、カイはそう思いながらも、イリアをぎゅ っと抱き締めた。 それでも、このぬくもりを代償に手に入れるべきものはないのだと、カ イは確信した―― |