(…眠れない)
真夜中の宿屋。イリアは一人目を覚ました。
別に悪夢に魘されたとか、暑くて寝苦しかったというわけでもなく、何となく目が覚めたのである。
もそもそと起き上がって首を横に2、3度振り、また横になって眠りにつこうとするが、
寝ようとすればする程寝れなくなる。
どうやら脳も目も完全に覚醒してしまったらしい。
枕元ではレムがイリアお手製の専用のベッド(籠に可愛い白のハンカチを敷き詰めたもの)でスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。
そんな彼女を起さしてしまわないように慎重にベッドから抜け出すと、
眠気がまた来るまでの時間潰しと気分転換も兼ねて、外へ向かった。

宿屋の裏側は小さな広場になっている。
昔森だった場所を切り開き作られたもので、広場の向こう側は長い森が続いてる。
また、椅子やテーブルに切り株が使われている所にもその面影が残っている。
イリアはその椅子のうちの一つに腰掛けた。聞こえるのは虫の声と、風のそよぎ。
目を閉じてそれらの音を堪能する。
(この感じ……兄さんと暮らしていた森の感じに似てる………)
暫く感傷に浸った後、ゆっくり瞼を上げると、雲の切れ目から2つの月が徐々に現れるシーンが瞳に飛び込んできた。
ずれの無い、完璧な円形。溢れる金色の色。
それは美を越えて、禍禍しさを醸し出していた。
(そっか、今日は輝月宮だったんだ……)
イリアは丸い月達を見上げて、ふと思い出す。
(そう言えば…)
(異世界に行ったのも、こんな輝月宮だったっけ……)

一つ思い出すと、ダムが決壊したかのように次から次へと記憶が流れ出る。
(あの時は輝月宮が重なってて……年に数回しかないから運がいいって話になって………そんで同じコト言っちゃったんだっけ………)
(…シオンと。)
今は亡き友の名を心の中で呟くと、イリアは無意識のうちに顔を曇らせた。
(そう言えば、あんなコトもあったっけ……)
シオンとの馬鹿騒ぎを思い出して、楽しげな表情を浮かべる。
(そう言えば、こんなコトもあったっけ……)
シオンとの日々を思い出して、寂しげな表情を浮かべる。
「………………」
『あの時異世界にさえ行かなければ』
と、頭の中に浮かびかかったそのフレーズを、首を横に振り振り必死に打ち消した。
(いつまでもこんなだったら…シオンに怒られちゃうよね……)
と、逃げの考えに出た自分を叱咤して、部屋に戻ろうと椅子から立ち上がり、くるりと向きを変えようとしたその時、イリアの足が止まった。
広場と森のその境目に立っている人の姿を見てしまったからだ。
(嘘…)
あまりの出来事にイリアは目を見開き、硬直したまま動く事ができない。
やがてその人がイリアから遠ざかり始めるのと同時に、イリアは自然と駆け出していた。



人の手の加えられていない森の中は暗く、足元もかなり悪い。
しかし今のイリアにはそのどちらも大した問題ではなかった。
明るい昼間の街で、何もない所でもこけられるある意味器用なイリアだが、この時ばかりは小石にも大木の根っこにも躓きもしなかった。
目の前の人を見失うまいと必死に走った。
ただ、ひたすらに走った。
前を行く影の輪郭がはっきりするにつれ、イリアの動悸が激しくなっていく。
それは全力で疾走しているから、というわけではなく、むしろ―――――

そして、その人は動くのをやめた。
イリアは更に足を速めて、その人めがけて全力で駆けていく。
今までは走る事に無我夢中で気づかなかったが、いつの間にか木々は疎らになっていて、視界に入る色合いからして目的地には泉があるようだ。
イリアが近づいても、その人は一向に動くそぶりを見せなかったので、イリアは徐々に速度を落としていった。
そして問題の人物の3メートルぐらい後方の地点に到達して、足を止めた。
深呼吸して息を整え、気分を落ち着かせる。
その間も眼前の人は微動だにしない。
(…………よし。)
意を決して、名前を呼ぶ。
「…シオン。」
人物が振り返る。

間違いない。見間違えるハズがない。
背も髪もイリアが最後に見た時より伸びていたが、確かにシオンである。
と、同時に確かにシオンではなかった。
以前より少し高い視点からイリアを見下ろすその瞳は、暗く深く濁っていて、生気が全く感じられなかったのである。
「…シオ……ン?」
2回目の呼びかけには、いくらか恐怖の色が混ざった。
「………」
今度は反応が無かった。
「…シオン?」
3度目の呼びかけ。これにも無反応
………かと思った瞬間、シオンは無表情のままイリアに近づき、突然の出来事に一歩も動けなかったイリアの腕を掴むと、グイっ、と自身の胸に抱き寄せたのである。

「えっ!?…ちょっ、シオ……」
イリアは驚いた。
シオンのその行動にも驚いたが、それ以上に彼の温度に驚いたのである。
冷たい。あまりに冷たすぎる。
イリアがまだウリックとしてシオンと旅していた頃、彼女がふざけてやった分も含めて、彼の身体に触れた事は何度かあった。
そのいずれの時も温かかった。あの時のぬくもりは、時がどんなに流れようとも決して忘れはしない。
そのぬくもりが、微塵にも感じられなかったのである。
「放して、シオン…!!!」
怖くなったイリアがシオンから逃げだそうとするが、何か魔法を使われたらしく、両足が思うように動かない。
「………」
歯がゆい表情で顔を上げると、シオンが相変わらず無表情でイリアを見下ろしていた。
「……………」「………!?」
力なくシオンから顔を背けた時、シオンの背後から誰かが近づいてくる気配を感じた。
「大好きなオトモダチとの久しぶりの再会だというのに、あんまりな態度ですね。」
聞き覚えのある声。イリアに緊張が走る。心臓がドクドクと早鐘のように鳴り響く。
この声は……この声の主は………

ゆっくりと、声のした方に視線を向ける。
「そんなに恐い顔しなくてもいいじゃないですか、イリアさん?」
冷たい笑みを携えたイールズオーブァがそこにいた。
「な…何で、お前がここに!?」
イールズオーブァをキッと睨めつけながら問いただす。
「そんなの決まってるじゃないですか。貴女に会いたかったからですよ。」
答えながらイールズオーブァはゆっくりとこちらに向ってくる。
「それよりどうしたんです?あんなに会いたがっていたシオンに再会させてあげたというのに……
挨拶どころか拒絶なんかしたりして。それでもオトモダチですか?」
「うるさい!こんなニセモノでボクを騙そうったって、そうはいかないんだからね!!」
間髪を入れずに反発したイリア。しかしイールズオーブァは動揺もせず、笑みも崩さず
「ちゃんとホンモノですよ?」
と極めて冷静に返した。
「う、ウソだっっっ!!!女嫌いのシオンはボクをこんな風に抱きしめたりしないし、
……それに、それに!ボクのこと馬鹿にしたりワガママ言ったりしないし、あったかくないし……
……だから!こんなシオン、シオンじゃないやっ!!!」
なりふり構わず力の限りに叫ぶイリアに苦笑しながら、イールズオーブァは説明を続けた。
「だからホンモノですってば……。あの時あなたが異世界に置き捨てた………正真正銘、本物のシオンの『死体』ですよ?」
「な…」
言葉を無くすイリアを無視する形で、イールズオーブァは尚も自慢気に語る。
「彼にかけた術は“血の命約”と言いまして………これは術者が己の血に魔力を込めて仮初めの魂を創り、それを死体に溶かすことで擬似的に蘇生させ自由に操れる……そういう反魂魔法なのですよ。」
「つまり…生きてるってコト?」
イリアは脳をフル回転させてイリアなりに今の説明をまとめてみた。イールズオーブァは少し考え込んだ後、律義にも彼女の質問に答えてくれた。
「そうですねぇ……一応心臓は止まったままなんで………生き返ったと言うよりむしろゾンビと言った方が近いかもしれません。」

またも絶句するイリア。
「そうそう、この術は本来なら死した時の年齢のままで生き返るんですが……まぁ死体なので当たり前なんですが。
私の術はその上をいってまして、こんな風に死んだままでも身体を成長させることができるんですよ。
折角の再会なのに、相手役が小さいまま、というのも不格好の極みですし、
丁度3年分、成長させてあげておきましたよ?
……どのみち死体には変わりないですが。」
言葉の中に、いちいちイリアがショックを受けそうな言葉を確信犯的に織り交ぜるイールズオーブァ。
それは予想以上の効果があったらしく、イリアはシオンの腕の中で青ざめたまま動けずにいた。
「な…んで……こ、んなコト…するの?」
イリアはパクパクと口を開閉させて、ようよく絞り出すようにそれだけ言えた。
「さっきから“何で何で”と繰り返してばかり……全く駆け引きというものをわかってませんね。
…まぁ、それはともかく。そんなの決まってるじゃないですか。」
ここでイールズオーブァの顔から笑みが消える。
「貴方達に苦しんでもらうためですよ。」
「…?」
何のことかさっぱり理解できないイリアを尻目に、イールズオーブァは淡々と言う。
「3年前のあの日…私は貴方達によって一度倒された。まずシオンには私の芸術品を壊され、身体を吹き飛ばされ……許し難い屈辱です。
…しかしもっと許せないのはその後。よりにもよって貴女の手でトドメを刺された。
それも魔力も知恵もない……相手を殴打するだけという極めて原始的な方法で。これ程屈辱的な事はありません。」
イールズオーブァの氷のように冷たく、研ぎ澄まされた刃の様に突き刺さるような視線が、その怒りを物語っている。
「ですから貴方がたにも屈辱を味わっていただこうと思いまして。」

イールズオーブァはニヤリ、と笑った。
「彼は……こうして私の手中に収めてみると、
様々な面で役に立ってくれるので、これで十分です。
聖石の研究対象としても貴重なサンプルですし。
そして問題の貴女には…」
イールズオーブァは自身の指先にイリアの下顎を乗せて低い声で囁いた。
「“女”である事を利用した屈辱を味わってもらおうと思いまして。」
「………?」
何の事かと思案を巡らしているイリアに向って、邪悪な声で言い放つ。
「この意味が分からないほど、子供じゃないでしょう?」
世界で一番愛しい人に抱きしめられながら。
世界で一番憎い人からの口付けが降ってくる。
それは、イリアにとって、紛れもなく初めての―――――

「んっ…、ふぁ、ぁ…」
イリアは後ろからシオンに抱きしめられたまま、股を大開にした状態で地べたに座り込んでいた(正確に言うと、先程シオンとイールズオーブァによって無理矢理このポーズで座らされた)。
シオンの左の手はイリアの乳房を、右の手はイリアの陰部を弄っている。
「や、だ……めて…シオ……ン」
と涙声で願っても、シオンの手は止らない。
「あー、そうでした。すみません、イリアさん。
一つ大事な事を言い忘れてましたよ。 今の彼は私の操り人形…つまり私の命令しか聞かないんですよ。貴女が泣こうが喚こうがどうにもなりません。
私が『止めろ』と言えば止めますけどね。 でも安心して下さいね?そんな命令する気はさらさらないので。」
少し離れた所で、イリアを視姦しているイールズオーブァがにこやかに解説した。
「…………」
必死に涙を堪えて無言でイールズオーブァを睨み付けたが、それがかえって墓穴を掘る結果となった。
「おや?いけませんねぇ、その生意気な態度。こういう時はもっと嫌がって、激しく抵抗して、恥じらってもらわないと、 ヤり甲斐がないじゃないですか。
こういう事をするのも私とて心苦しいですが、仕方有りません。シオン。」
イールズオーブァの呼びかけと同時に、シオンの愛撫が激しくなる。 寝間着ごしに乳首を摘ままれたまま乳房を大胆に揉みしだかれ、下の入り口をなぞる指先の動きが速くなる。
「ん…、っ……あ、…んぁ、あん、やぁっ……あっ……」
刺激による快楽、それを上回る恥ずかしさ、そして何よりイールズオーブァの言い成りになっているシオンに対するもどかしさ―――
様々な感情を映した涙が一筋、また一筋とイリアの頬を流れていく。
「あぁ…イイですねぇ。段々イイ顔になってきましたよ、イリアさん?」
イールズオーブァは何をするでもなく、ただ遠くからシオンに犯されるイリアの姿を視姦し続け、
時折思い出したように言葉でもってイリアの恥辱を煽った。

「ぁふ…やっ、ぁん……あぅっ、あ…っ……、…っっえ!?」
イリアの声が上ずる。
イリアの着ていた服は紐を背中で締めて止めるタイプになっていて、シオンがその紐を口で器用に解いたため、彼女の寝間着がずり落ち、彼女の鎖骨はおろか、胸部が露になったためである。
「あっ…!?やだぁ……!」
慌てて両腕で胸部を覆い隠すが、それがかえってシオンの腕を固定させる事となり、逆に乳房を直に掴まれてしまった。
「ひぁっ……ぁん!」
そして無防備になった首筋から鎖骨、背中の隅々まで、シオンの舌がつーーーっ、と流れていく。
「あく、…んぁ、………っはん、んっ、んぅっ…!」
身を屈めて、目を瞑り、それらの陵辱に耐えるイリアの顔を、イールズオーブァがゆっくりと上げた。
涙を溜めた藍の瞳には、恐怖の色も浮かんでいた。
「そんなに怯えないないで下さいよ。」
イールズオーブァは苦笑した。
「誘ったのは……貴女の方なんですからね?」
「そんなコトしてナイ!」とイリアが反論するより先に、イールズオーブァによって口を塞がれる。
今度の口付けは、相手と深く交わるネットリとした、長く、いやらしいキス。
「んっ、んぅ…んむっ……んんっ」
イリアは全くそんな気は無いのだが、イールズオーブァの舌が口の中でしつこく動き回るので、勝手に舌が動かされてしまう。
「は………っぁ」
ようやく唇が解き放たれると、夜の闇の中でてらてら鈍く光る細い細い糸が、二人を繋いだ。
そしてイリアが呼吸を整える間も与えずに、頬、首筋、鎖骨に舌を移し、そしてシオンの指と指の間からわずかに見えていた乳首にも口付ける。
「ひぁっ…あ、ぁん……っん、んはっ…、…っやぁ!」
イリアの右の乳房はイールズオーブァに舐め尽くされ、左の乳房はシオンとイールズオーブァの愛撫によってもみくちゃにされ、原形を留めていなかった。
「んはっ…っあ、…ねが……も、んんっ、…め、て…っぁ」

「え?何ですって?」
イールズオーブァは彼女が何を言わんとしていたか十分承知だったが、わざと聞き返した。
「んぁ…っ、っあ、……も、やっ…ん、……て」
「“もっとやって”ですって?本当に仕方の無い方ですね。」
イールズオーブァをくすくす笑いながら、舌先を徐々に下へ下へと這わせていく。
「あ……んぅ、…ち、が…っぁ」
「何が違うんです?」
事も無げな様子で服の裾をたくし上げ、するすると下着を脱がすイールズオーブァ。
「こんなに濡らしといて、 何を言ってるんですか?ほら、聞こえるでしょう?」
ぴちゃっ、と淫らな水音を響かせて、桃色に染まったソコを味わう。
「んぁっ……!?」
イリアの上体がビクンと跳ね上がる。
「ふぁ……、ん、やっ……ぁあ、んぁっ……あぅっ」



上半身はシオンに、下半身はイールズオーブァによって、留めども無く陵辱される。
「……うぁっ、あっ、んぅ…っ……うっ……んぁっ…」
「何ですか?そんなに感じちゃって………もしかしなくてもこういうコト、“好き”なんですか?」
イールズオーブァが充血した陰核を歯で軽く噛みながら、蔑みの目でイリアを眺める。
「…っあ……が、…ち……んぅっ、ちっ……が、ぅ……」
「あぁ、失礼。“大好き”なんですね。」
にこやかに微笑むと、イールズオーブァは蜜の溢れる花びらの中に、人差し指をゆっくりと侵入させた。
「!?んぁっ…!?ひっ、……ぁ」
信じられない事態と、何とも言えない痛みと快楽に、がくがくと震えるイリアの全身。
辿り着いた先に、最も感じる所を探り当てると、ぐちゅぐちゅと音を立てて激しく掻き回した。
「…んはっ、ぅ……あっ、あふ……ん、あぁっ、…あ、……っ」
「おや?1本じゃ足りませんでしたか?」
そう言うと、今度は中指も中に刺し込んだ。
「ひっ、ぁあ……あふぁ…んぁっ、やっ……ぁ、あっ」
イールズオーブァが中を弄る度に、イリアの肢体はびくん、びくん、と派手に踊り、淫らな蜜がとろとろと溢れ出てくる。
「ん…も……っ、や…んぁ、……、め…い、ぁあっ……」

「ほら、自分ばっかり楽しんでないで、彼にもしてあげなさい。」
その言葉の意味を考える間もなく、イリアの口の中が、膨張したシオンで満たされた。
「んむっっっ!?」
慌てて離れようとするが、後頭部を両手でしっかり抑えられていて、
逆にシオンの動きに合わせてソレを舐めしゃぶらされる結果となった。
「んっ、んぐ……ぅん……、っん、……んむ、むっ」
「スゴイですね、どんどん溢れてきますよ。そんなに彼のが欲しかったんですか?」
イールズオーブァはわざわざ顔をイリアの耳元に近づけると、指先でイリアを楽しみながら低い声で囁いた。
しかし尋ねた所でシオンで口が塞がっているイリアが答えられるはずもなく、
「っと、失礼。今は何も喋れなかったですね。」
と、イールズオーブァはわざとらしく詫びた。
「んふ…、…んむ、んぅっ、……んく、む……んんっ、…んぐ」
イリアは快楽の喘ぎとも、苦痛によるうめきともとれる小さな悲鳴を上げ続けた。
「でもまぁ、これ以上このままと言うのも見るに忍びないですし……楽にしてあげましょうか。」
一方的に言い放つと、イールズオーブァは自分の指を引き抜いた。

「………。そうですねぇ。このまま私がしてもいいのですが………せめて最初だけは、彼に譲ってあげましょうか。」
ゆっくりとシオンがイリアの口内から出て行くと、息つく間もなく今度は下の入り口から正常位で中へ入ってきた。
「……っぁあ!?ぁく、や……い…っ、たぁ……っあ、あぁっ!!!」
シオンに深々と貫かれたまま、激しく揺さぶられる。
更に、ゆさゆさと無防備に小刻みに揺れる小さな胸を鷲づかみにされ、そのまま激しく愛撫される。
「んはっ、あ、……ぁっ、…んぁ、あ、あん、…あっ!」
シオンのリズミカルな動きに合わせてイリアの悲鳴が上がる。
「…ひぁ、っあ……あん、あ…っ、ん……ん、んくっ!!!」
「ほら、お口はこっちですよ?」
イリアの口内が、今度はイールズオーブァで満たされた。
「分かってるとは思いますが、歯は立てずに舌と唇だけでするんですよ?」
イリアの頭を撫でて、既に興奮しきったソレを、強制的にイリアの舌と口で愛撫させる。
「そうそう。結構上手いじゃないですか。」
「んはっ、……あ、あぁ…っ、んく……っぁ、んむ、む……ぅ」
「手も使ってくれていいんですよ?」
イールズオーブァはイリアの手を取り、根元にそっ、と添えさせた。
「そのまま柔かくしごいて下さい。」
イリアは抵抗する術もなく、仕方なく言われるままにする。
その間、繋がったままのシオンは身を屈めて、乱れた髪を掻き分けて首筋や鎖骨に長い長い口付けを落とした。

「……んくぅ、んぶ…ぁ、……っん、ん、あぅ……んむぅ、んぐ、っぁ……」
朦朧とする意識の中で、ただシオンと繋がった場所だけが場違いなくらいに熱くなっているのがわかる。
ソコから、ピリピリとした痛みが全神経を蝕んでいく。
(ボク………どうなっちゃうんだろう……………?)
ぼんやりとそんなことを考えていると。
「そろそろ出しますよ?」
と、遠くでイールズオーブァの声が聞こえて。


そして絶頂に達したイリアの顔と下半身に、熱い液が浴びせられた。




イリアは虚ろな目で草の上に仰向けで寝転んでいた。
激しい痛みと空虚感で、身動き一つ出来ない。
「それなりに楽しかったですよ、イリアさん?」
焦点の定まらない瞳で声のした方を見ると、黒の中に2つの金の輪郭がぼんやりと見えた。
二人とも、立ったままで自分の顔を覗き込んでいるらしい。
「気が向いたら……また会いに来てあげますよ。今度はもっと楽しいコトしましょうね?」
上機嫌でそう言うと、イールズオーブァはシオンを連れてどこかへ行ってしまった。
イリアは二人が消えていく様を、ただ目で追うしか出来なかった。

それから、どれくらいの時間が流れたのだろう。
イリアは全身に走る激痛に耐えながら、ずるずると這いつくばって、泉へと向った。
そして何とか泉に到着すると、自身にかけられた白い液体を泉の水で拭う。泉の水は思いのほか冷たかったが、シオンの肌、そしてイールズオーブァの視線に比べると、むしろ温かいくらいだった。
躊躇う事無く、泉に浸る。
(……………)
嬲られた箇所を、水で丁寧に、丁寧に拭っていく。
(……イタイ)
一際ズキズキと痛む場所を優しく擦って、心の中でポツリと呟く。
(――こんなのがキモチイイなんて、信じられない……)
シオンを失ってカイと再会するまで、レムと二人きりで旅をしていた時。
イリアは旅費を稼ぐために色々なバイトをこなした。その中で、同世代の女の子が、確かそんな事を言っていたような気がする。
(――こんなの、痛くて苦しいだけじゃないか……)
パシャパシャと水でソコを労る。


(だけど、もし……)

(シオンと二人っきりで……)

(シオンが自分の意志でボクをだっこしてくれてたら……)

(キモチよかったのかな……?)


考えても答えが出てくる訳でもなく。
黙々と体を漱ぎ続ける少女を、ただ金の月だけが、悲しいほどに明るく照らし続けていた。